6、 7号機の早期再稼働を目指す東京電力の広瀬直己社長と、再稼働に慎重な新潟県の泉田裕彦知事の5日の会談は物別れに終わった。東電は新規制基準の施行当日 8日の申請を見送り、引き続き地元の理解を求める考えだが、安全確保の徹底を求める地元と、一刻も早く原子力規制委員会による安全審査を申請したい東電と の隔たりは依然として大きい。
「もう少しやりようがあったと反省している」。広瀬社長は泉田知事との会談でこう述べ肩を落とした。東電が地元説明に先立つ2日に原子力規制委員会へのの再稼働申請の方針を表明したことには、柏崎市の会田洋市長も疑問を呈した。
東電は当初、地元説明を急ぐ考えだったが、再稼働に難色を示す泉田知事に面会できないままだった。新規 制基準の施行日が8日に迫る中、焦りを募らせた東電は、批判覚悟で申請表明に踏み切らざるを得なかった。結果的に、この日ようやく泉田知事との面会は果た せたものの、再稼働へのハードルの高さを再確認させられることになった。
東電が再稼働申請を急ぐのは、規制委の安全審査に「半年程度かかる」(規制委幹部)ためだ。すでに4電 力会社が5原発、計10基の再稼働申請を決めている。仮に審査の第1陣に入れなくなれば、東電は先に申請する10基の審査を待たねばならず、再稼働までに 最低でも1年かかるとみられる。東電にとっては黒字転換に不可欠な年度内再稼働が不可能となり、黒字化のめどは立たなくなる。金融機関による東電向けの融 資継続もおぼつかなくなる。
「地元」と「経営」の間で苦しい判断を迫られる東電。しかし、地元の理解が不十分なまま申請に踏み切れ ば、かえって再稼働に不可欠な地元同意が遠ざかりかねない。泉田知事は毎日新聞のインタビューに、規制委の新基準は不十分で、クリアしたとしても「安全を 確保したことにはならない」との考えを示し、政府の対応にも疑問を投げかけている。東電社内からは「知事の要請の多くは、国の政策に関わるもの。政府の助 力が必要」(取締役)との声も漏れており、今後は政府の対応も再稼働のカギになりそうだ。